2011.06.09
終の栖(ついのすみか)



写真は震災の少し前に竣工したリフォームです。
十数年前に大変立派な母屋を建てられたお施主さんですがそれをご子息に譲り、
広い敷地の中に残存していた古い家屋のリフォームを行って
夫婦二人の終の栖(ついのすみか)にするというものです。
お施主さんは、ご夫婦とも学校の先生をされていましたが既にリタイヤされている
そんな世代のとてもあたたかい雰囲気をもつ素敵なご夫婦です。
母屋はそれはそれは立派な造りで、花梨や檜、そして京壁という
かなりびしっとした感じに仕上げられていましたので、
今回のリフォームにおいては、
唐松の床、杉板の仕上げ材、漆喰の壁というように、
ぬくぬくとあったかい雰囲気にしたいなあと考えました。
写真を見ていただくとわかるようにここはもともと和室の続き間でした。
1本だけ見えている柱の右側部分が縁側だったところです。
このどうしても残ってしまう柱には麻縄を巻いています。
(ここだけ僕が巻きました。抱きつきたくなるような柱でしょ・笑)
そして、いつまでも元気でいて下さるようにちょっと粋な要素を取り入れる
ということも同時に考えましたヨ(お施主さんには内緒で、、、^^)
写真にあります5枚の板戸は、四方框杉羽目板の建具を吊レールで吊っています。
杉の赤白を意図的に出して(源平杉と言います)ゆらぎのある優しいデザインにしました。
ランマ部分は解放して間接照明を仕込み、やわらかく優しく照明できるお部屋にしています。
(建具職人さんには大変な苦労を掛けてしまいました。)
実はこの板戸、5枚のうち4枚分が収納になっており、
残り1枚は隣のお部屋(寝室+水回り)に行けるようになっています。
さあ、ど~れだ?
そうです!隠し部屋^^
だいぶ前になりますが、“隠し部屋”という日記を書かせていただいたのを
覚えていらっしゃいますでしょうか?
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=410552982&owner_id=9289619
大人な方だけ読んで下さい(笑)
(追記)
築30年以上のとても古い家屋でした。
栃木県では鬼怒川以東において、古い家屋の被害が目立ちます。
この建物もそんな地域の中にありましたが、震災前に耐震補強を含めた工事
を行えたことが幸いし、軽微な損傷もまったくなく難を逃れることができました。
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2010.02.10
創りたい“こと”

写真は前回の日記に貼り付けましたリフォームの
クライアントさまです。
(いい具合にピンボケなので使ってしまいます。)
実はこちらのご夫婦、
お二人とも70越えなのです
いるんですねえ~~~森 光子さんも顔負けのお方が!
ご主人はとても優しく上品なお方。
奥様はすらっとしたそれはもう大変な美人さんです。
とても粋なお二人でちょっとにくい(笑)ですネ、ご主人。
などと、70代の方にやきもちをやいてしまったのは初めてのことでした。
この日、ご主人は白無地のシャツを第一ボタンまで締めて、
奥様はとても上品なニットにアクセサリーを付けて
満面の笑みで、2か月ぶりに訪れた僕を迎えてくれました。
これをいただけただけで、もう何も言うことはなく、
やったね気分のアール・イーでございましたヨ^^
きっと僕は、建物やインテリアではなく、こういうことを創りたい
のではないかと何となく思う今日この頃です。
2010.02.04
こだわりと洗練と粋。



“こだわり”という言葉があります。
ポジティブな意味で使われることが多い言葉ですが、
何かにこだわるということは、その他多くの可能性を切り捨てて
しまうことでもありますから僕はもともとあまり好きな言葉では
ありません。
“洗練”という言葉があります。
これもポジティブな意味で使われることが多い言葉ですね。
最近僕はこの言葉が好きではなくなってしまいました。
どうしてかは、、、すみません。
何とか表現しようと思ったのですが上手く言葉にできません。
“粋”という言葉があります。
大好きな言葉です。このコントロール不能な尺度にずっと悩まされ
続けていますけれど、やっぱり好きです。理由はありません。
僕にとっては、上の二つの言葉の対極に位置する言葉です。
などと、書いておきながら、、、
実は、100%自然素材のリフォームに挑戦してみました。
写真がそうです。(携帯の写真につきピンボケお許し下さい)
壁と天井はしっくい。
無垢の杉板を思い切り使った壁収納と建具
キッチンもオール木製のフルオープン。
お施主さまは当然こだわっていらっしゃいましたけれど、
そして、それに応えることが僕の仕事ではありますが、
密かに、、、
いかにこだわりなくやれるかなどとということを考えていた
アール・イーなのでした。
2008.10.04
大きな鳥の羽根のおうち



ある小児科医院さんの改装をさせていただきました。
改装そのものは仕上げを変える程度の軽微なものですが、
なにかもっと素敵なことができないかなあ。。。ということで、
エントランスの大きなガラスドアに白のペイントで絵を描くことにしましたヨ^^
=写真上左=
アーティスト(自称図画工作家)のサトウヒロミさん。
ヒロミさんご自身もおかあさんになったばかり。
今回の仕事にぴったりツボでした。
患ってくる子供たちやおかあさんの気持ちに優しくしみ込んでくるような
絵を描いてくれました。
=写真上右=
クライアントであるO先生と奥様、そして子供たちもコラボレートしています^^
=写真下=
白のペイントだけで描かれた絵なのですが、ヒロミさんの絵は想像の中で
色や音が、そして(見る人それぞれに思い描く)ストーリーが広がっていくような
感覚を覚えます。本当に素敵な絵です。
今回はじめてヒロミさんのライブを拝見することができました。
いつも普通にお話しているときはぽっちゃりとかわいらしい素敵な女性なのですが、、、
イヤホンをつけてスイッチを入れ、絵筆を持ったとたんに・・・
その眼差し、
時折きこえてくる鼻歌・・・
なんと表現したらよいのでしょう。
表現者の塊と化したヒロミさんを目の当たりにして
ぞくぞくするような感覚とともに言葉をなくし、
その場に立ち尽くしていたアール・イーでございました。
アーティストって、、、かっこいい!、、すごい!
2008.05.10
築140年+追記です。



ついに~~~~~~~~~
(パタン、、、イテ。。)
できました。
築140年の古民家のリノベーションです。
建物もつわものでしたが、クライアントさんもなかなかのつわものでいらっしゃって、、、
今はまだ感想を述べる気力はしぼっても出そうにありません・・・スミマセン。
先ずはクライアントさんをはじめ関わって下さった皆様に
心から感謝を申し上げたいと思います。
本当にありがとうございました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(追記)
つわもの・・・・・な~んて書いてしまいましたので
よからぬご想像を招いてしまったでしょうか?
クライアントさんは120%満足しておいでです^^
最後はご自身もやりきったぞ!という気分満々でした。
ただ、クライアントさんの暴走(?笑)をコントロールしきれなかったというのはあります^^
でも、そういう高揚する気分はすっごくわかるんですよねえ。僕らも同様でしたから。
結果僕らの意図とのズレがかたちとして残ったわけですが、
それはまったく問題ではありません。
もともと僕らはそのズレのなかにある素敵な価値を引き出したいと思っているような
ところがありますし・・・。
問題、、、といえば、あまりにも掛かり過ぎてしまった手間ひまでしょうか。
報酬を2倍いただいても合わない仕事になってしまいました。
まあ、そんなこともありますネ^^ヤレヤレ。
と、
笑って言える今があることの幸せを感じているアール・イーなのでございます。
2007.10.11
築140年



10.11 とうとうはじまってしまいました。
今年1月からあたためておりました築140年の古民家の改装+耐震補強
の工事です。構造計画面での紆余曲折が多々ありまして実に9ヶ月もの期間
を設計に費やしてしまいました。
140年というじかに体験することができない時間に相応しいデザインを
すべく頑張ってみましたが、本当の闘いはこれから・・・
解体のみで1ヶ月の期間を設け、丁寧に解体しながら見えてきた問題を解決
しつつ最終ディテールの図面を同時並行的に作成していくという
とんでもなくタフな作業にとりかかろうとしています。
おー胃いた。
本日、敷地の地面に祈ってまいりました。
どうか良い仕事をさせていただくことが出来ますように・・・
そして、大きな決意をして下さったお施主さんにこころからの感謝をしたいと思います。
2007.03.22
Ebony & Ivory

写真は昨年11月にお引渡しさせていただきましたリフォームです。
ちょっと特別なお部屋かもしれません。
二つの子供部屋をひとつにしてつくったサブリビングなのですが、
ここは、インテリア好きのご夫婦のための実験ブースでもあるお部屋。
数年後に生まれ故郷にもどっての新築を考えていらっしゃるという
クライアントは、今のこの家でいろいろなことを試したいとおっしゃっていましたが、
なんだか僕自身が試されているようなプレッシャーも感じつつの仕事となりました。
ご主人様はテニスで一年中真っ黒に日焼けしている精悍な方、
奥様はとっても明るく笑顔の美しい方です。
僕は主に住宅をやっておりますから、
普段はあまり表現的なデザインをすることはないのですが、
今回はやってみました!
昼と夜。光と闇。白と黒。それら対比するものに
クライアントであるご夫婦を暗喩させながら、
深い部分で繋がりあうような関係性がつくれたらいいなあ。
な~んて考えてみたわけです。
(理屈の上では・・・)
もともとそんなに広くないお部屋を広く感じさせるためにガラスの映りこみを利用したり、
黒く大きなピアノの圧迫感を打ち消すために光をピアノの黒い鏡面に映したり、
奥行き感のある柔らかい膜のような壁をつくったり、
同時にピアノの音が響きすぎないようにするための吸音壁でもあったり・・・
と、いうことなのですが・・・
(理屈では割り切れない気持ちの上では・・・)
夜になると柔らかく優しい光が闇に溶けこんでいく・・・そんなイメージです。
白と黒のキーボードが美しいメロディを奏でるように
対比するものが調和を生み出したとき、
(昔、ポール・マッカートニーとスティービー・ワンダーも歌っていましたね。)
素敵なことって起こるような気がしませんか?
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