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2007.04.05 夜の家
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Sky Hut At Night

“大きな空”以外には何の特徴もない敷地に計画したこの建物は、一枚の
大きな片流れの屋根を持っています。ガルバリウム鋼板素地平葺きでつくられた
一枚屋根は、“大きな空”と対峙するように存在しながら、青い空を映し、
闇に融け、月光に浮かび上がることでしょう。

“Sky Hut”と名付けられたこの建物は、夜という時間のためだけに計画
されたものではもちろんないのですが、夜という時間における在りようを
意識的に計画することで、夜を夜として捉え直すことができるのではないか
と考えました。

夜という時間は、日常的には、自分を取り戻す時間であると同時に、とても
親密な時間でもあると思うのです。そんな時間にふさわしい空間とは・・・

この家は、個人のプライヴァシーを最低限確保している以外は、ほぼオール・イン・ワンの
箱型であり、広がりと流動性が得られた空間構成を持っていますが、夜という
時間においては、光を孕む半透過性の布と照明の効果でつくられたやわらかい
“光の膜”によって、より親密なスケールへと変貌させることができます。
全体照明としても機能しているこの“光の膜”は、住まう人を優しく包み込む
まるで羊膜のように存在しています。

また、居間と連続するデッキは、日中の活動的なシーンを生み出す一方、夜においては、
床下に仕込まれた照明の効果によって、やわらかい光の上に浮かぶ月見台
へと変貌します。その上では身体がフッと軽くなったような浮遊感覚を得ながら
月光を浴びることができるという仕掛けです。

でも・・・、
こんな家を本当につくってしまったら、その心地良さに、いつしか深い眠りの
海に沈み込み、気が付くと居間や月見台で朝を迎えていた。な~んてことに
なってしまわないかとちょっと心配になったのでした。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
実は、この文章は5年ほど前に書いたものです。
“夜の家”という課題に従って設計するコンペのときの設計主旨=コンセプト
ってやつなのですが、あまりそれらしくないですよねですいません(笑)
このときに考えていましたことが、後になってから次々と実物件で実現する
ことができたという僕にとっては非常に思い出深いコンペなのです。

中村好文さんの影響をすごく受けた時期でもありました。
ご存知の方は、文脈からお解かりいただけるのではと思います。

たまに振り返ることでまた違ったものが見えてくることもあったり・・・
思えばこの仕事、ず~~~っと考え続けるという仕事なのかもしれませんね。

画像は初期スタディのスケッチ。

夜の家がデザインソースとなっている家達↓(文章は余談ばかりですみません)
http://remoon1118.blog83.fc2.com/blog-entry-9.html
http://remoon1118.blog83.fc2.com/blog-entry-8.html


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